こんにちは
歯並びはひとりひとり異なり、親子や兄弟であっても同じ歯並びの人はいません。
これは、歯並びが歯の形や大きさ、顎の大きさなど遺伝的に決まる要素のほか、習慣、つまり癖にも影響されるからです。
言い方を変えると、歯や顎の形や大きさは変えられないにしても、習慣を改善しておけば、歯並びが悪くなるリスクを減らすことができます。
そこで、今回は、歯並びを悪くする習慣について解説します。
歯列不正の原因
歯並びが悪くなる、すなわち歯列不正の原因は、大きく分けるとふたつです。
先天的な原因
先天的な原因とは、遺伝的な原因、生まれ持った原因と考えてください。
歯の形や大きさ、顎の骨格などが当てはまります。
このほか、過剰歯という通常は生えてこないはずの余分な歯、元々歯が存在しない先天欠如歯、口唇裂や口蓋裂のような生まれつきの病気などが挙げられます。
後天的な原因
後天的な原因は、日々の生活での習慣や癖などで、環境因子ともいいます。
詳しくは後ほどご説明しますが、日々の何気ない習慣の中に、歯並びを悪化させる原因が潜んでいます。
もし、「以前と比べて歯並びが変わってきた」「昔の写真に写っている歯並びと今の歯並びが違う」と思ったら、日々の習慣に歯並びを変えた原因が潜んでいる可能性が高いです。
歯列不正に関係する習慣
歯列不正を起こしうる日々の習慣についてご説明します。
舌を前に伸ばす癖
舌先を前に伸ばす癖を舌突出癖といい、舌先が下がっている人に見られます。
舌の先は、上顎の前歯の裏側の歯肉に当たるのが正常です。
ところが、舌先が下がり、下顎前歯の裏側に当たると、下顎の前歯を内側から舌が押すことになります。
すると、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前に出る下顎前突や上顎と下顎の前歯が当たらない開咬、上顎と下顎の前歯の先端同士が当たる切端咬合などの歯列不正を引き起こします。
口呼吸
口呼吸は、文字通り口を使って息をする習慣です。
人は本来の呼吸法は、鼻を使う鼻呼吸です。
舌先を正しい位置、すなわち上顎の前歯の裏側の歯肉に当ててお口で息をしてみてください。
舌が壁になってしまうので、息ができないはずです。
口呼吸をするためには、舌先が下がって、下顎の前歯の裏側に当たるようになっていなければなりません。
したがって、先ほどお話しした舌突出癖と同じ状態となり、歯列不正を引き起こします。
また、口呼吸は顔つきにも影響が現れます。
口輪筋という口の周りの筋肉が緩み、アデノイド顔貌という独特な顔つきになります。
歯ぎしり
歯ぎしりをすると、歯並び全体に過剰な力がかかります。
歯が全体的にすり減るだけでなく、前歯に前方に向かって傾けようとする力が加わります。
この結果、歯と歯の間に隙間が多い空隙歯列、上顎の前歯に下顎の前歯が隠されてしまう過蓋咬合、上顎の前歯が前に傾く上顎前突などの歯列不正を生じます。
指を吸う癖
指を吸う癖は吸指癖といい、大人の方にはまず見られない習慣です。
乳児に見られるもので1~2歳ごろまでに解消されるなら心配ありません。
多くは早い段階で自然に解消されますから歯列不正の原因にはなりにくいです。
ところが、幼児期や学童期になっても吸指癖が治らないことがあります。
このようなお子さんの場合は、上顎の前歯が前に傾き、下顎の前歯が後ろに傾く上顎前突症や上顎と下顎の前歯が当たらない開咬などの歯列不正の原因となります。
唇を噛む癖
上口唇、もしくは下口唇を上顎と下顎の前歯で噛む癖を咬唇癖といいます。
弄唇癖という言い方をすることもありますが、どちらも同じです。
唇を噛むと言っても、血が出るほど強く噛むわけではありません。
咬唇癖も、上顎と下顎の前歯に不自然な傾斜をもたらす原因となりますが、どちらの唇を噛むのかによって歯列不正の症状にも違いが生じます。
上口唇の咬爪癖では、上顎の前歯が内側に、下顎の前歯が外側に傾くことで反対咬合になります。
下口唇の場合は、反対に上顎前突になります。
爪を噛む癖
爪を噛む癖を咬爪癖といいます。
吸指癖と異なり、小さいお子さんにはあまりみられない習慣です。
爪は薄いので、吸指癖での指のように歯列不正の原因にはならなさそうですが、そうではありません。
咬爪癖が原因で起こる歯列不正は、前歯の隙間が開く正中離開などが多いです。
頬杖(ほおづえ)
頬杖をつく習慣があると、顎の骨や歯にアンバランスな過剰な力が加わり続けることになります。
その結果、下顎の骨が頬杖をつく側の反対側に向かってずれてしまうだけでなく、それに伴って噛み合わせも悪くなってしまいます。
異常嚥下癖
異常嚥下癖とは、舌を正しく使わずに食べ物や飲み物を飲み込む癖です。
正常な飲み込みの場合、舌は上顎全体を押すように上に持ち上げられます。
この飲み方では、奥歯の噛み合わせはしっかりとしていて、口の周りの筋肉にも不要な力が入りません。
一方、異常嚥下癖では、舌は上ではなく、前に押し出されます。
異常嚥下癖の舌の動きは、舌突出癖と同じような感じになります。
人は1日あたり、1000回くらい飲み込みの運動をすると言われています。
口呼吸のようにずっと口が空いていなくても、異常嚥下癖があると飲み込む度に舌が強い力で前歯を押すため、舌突出癖と同じような歯列不正を生じる原因になります。
まとめ
今回は、歯並びを悪くする習慣について解説しました。
歯並びを悪くする習慣は、
①舌を前に伸ばす癖
②口呼吸の習慣
③歯ぎしり
④指を吸う癖
⑤唇を噛む癖
⑥爪を噛む癖
⑦頬杖(ほおづえ)
⑧異常嚥下癖
などがあります。
こうした習慣・癖があると、上顎前突、反対咬合・開咬などさまざまな歯列不正を引き起こします。
当院では、歯列不正に関係する習慣や癖の治療にも長年取り組んでいます。
もし、これらの習慣や癖に一つでも当てはまるものがあるという方は、当院でぜひご相談ください。