歯並びをきれいに整える矯正治療ですが、治療中に虫歯が発生すると虫歯治療が優先となり、矯正治療を中断を余儀なくされることも珍しくありません。
治療期間が長期に及ぶ矯正治療ですから、その間の中断を防ぐためにも虫歯の予防はとても大切です。
矯正治療中の虫歯予防はどのようにすればいいのでしょうか。
今回は、矯正治療中の虫歯予防についてお話しします。
虫歯の原因
虫歯の原因が虫歯菌の作り出す酸にあることはよく知られていると思います。
ただ、酸だけが虫歯の原因かというとそうではありません。
歯の酸に対する溶かされにくさ、虫歯菌が酸を作り出す元となる糖分の量、酸に晒されている時間など、いろいろな要因が複雑に関係しています。
このため、これらの要因を取り除くことが虫歯予防のポイントとなります。
虫歯予防は、ご自身で行うセルフケアと、歯科医院で受けるプロフェッショナルケアの二つに分けられます。
セルフケア
ご自身での虫歯予防のポイントをご説明します。
ていねいな歯磨き
虫歯予防の基本は、毎食後の歯磨きです。
虫歯の原因菌が潜んでいるのは、歯の表面についているプラークです。
プラークを取り除くことをプラークコントロールといいますが、歯磨きを通して、プラークを歯の表面から取り除くことで虫歯菌の量を減らすことができます。
ですから、歯磨きが虫歯予防の基本となるわけです。
ところで、矯正治療中は、複雑な形の矯正装置が歯についていますから、磨きにくくなります。
特に、矯正装置と歯の間や、凸凹とした歯と歯の間が磨きにくいです。
しかも、この部分は、食べ物が引っかかりやすいところでもあるので注意が必要です。
ワンタフトブラシという毛先のコンパクトな歯ブラシや、歯間ブラシなどを使って、矯正治療を受ける前以上に、ていねいに歯磨きするようにしてください。
フッ素を使う
フッ素は一般的によく知られている虫歯予防法です。
日常生活でフッ素を歯に使う方法は、フッ素が配合された歯磨き剤での歯磨きやフッ素入り洗口剤でのうがいです。
フッ素入り歯磨き剤を選ぶ場合は、高濃度タイプがおすすめです。
フッ素の濃度が1450ppmと表示されている歯磨き剤です。
従来の950ppmと比べると虫歯予防効果が高くなっていますから、これを使って歯磨きすることをおすすめします。
ただし、6歳未満のお子さんは使えないので、6歳未満のお子さんがいるご家庭はご注意ください。
フッ素入り洗口剤は、フッ素が入ったうがい薬です。
歯磨きの後、1日1回もしくは1週間に1回うがいをすることで、お口全体にフッ素が広がり、虫歯を予防します。
食生活の見直し
虫歯菌が酸を作り出すと、お口の中のpHが下がります。
すなわち、お口の中のpHの低下と、虫歯の発生には強い関係性があります。
1日のお口の中のpHの変化を見てみると、食事をするとpHが下がり、しばらくすると回復します。
これを食事のたびに、何度も繰り返していることがわかります。
もし、間食の回数が多くなると、下がったpHが回復する前に、さらにpHがまた下がってしまうので、虫歯のリスクが高くなります。
お菓子をたくさん食べると虫歯になりやすくなるのはこのためです。
そこで、1日に何度も完食をしている方や長い時間をかけて食べている方は、『ダラダラと食べない』、『間食も含めて時間を決めて規則正しくする』、『間食の回数を減らすようにする』ことも虫歯予防のポイントです。
プロフェッショナルケア
歯科医院で行うプロフェッショナルケアをご紹介します。
ブラッシング指導
プラークを染め出しするなどして、磨けていないところをチェックします。
それを実際に鏡などで見ていただき、適した道具のご紹介や効果的な歯磨きの仕方をご説明します。
ブラッシング指導を通して、日々のセルフケアの効果を高めます。
プラークや歯石の除去
ていねいに歯を磨いていても、どうしても歯ブラシや歯間ブラシが届かないところが生まれてしまいます。
また、虫歯の原因菌が潜んでいるプラークは、古くなってくると歯石に変化するのですが、歯石は歯ブラシでは取り除くことはできません。
しかも困ったことに、歯石は新しくプラークが付着する足がかりになります。
そこで、歯科医院では磨けないところのプラークや歯石を専用の器械を使って取り除きます。
PMTC
PMTCは、専用の器械と研磨剤を使って歯の表面をきれいに磨く処置です。
プラークや歯石を取り除いた後、歯の表面をツルツルした状態になるまで磨くことで、プラークをつきにくくして、毎日の歯磨きで効率よくプラークコントロールができるようにします。
フッ素塗布
フッ素の使い方について、先ほど2つご紹介しましたが、もう一つありまして、それが歯科医院で行うフッ素塗布です。
フッ素塗布で使うフッ素には、歯磨き剤や洗口剤に配合されているフッ素よりも、歯にフッ素を吸収させる作用があります。
歯そのものを強くして酸で溶かされにくくするため、虫歯予防効果がとても高いです。
しかも年に数回受けるだけで、十分なのも利点です。
まとめ
今回は、矯正治療中の虫歯予防についてお話ししました。
矯正治療中に虫歯になったら、矯正治療が中断してしまいますから、虫歯にならないようにしなければなりません。
虫歯予防は、セルフケアとプロフェッショナルケアに分けられます。
セルフケアは
①ていねいな歯磨きをする
②フッ素入りの歯磨き剤や洗口剤を使う
③メリハリのある食生活を送る
プロフェッショナルケアは
①ブラッシング指導
②プラークや歯石の除去
③PMTC
④フッ素塗布
などです。
セルフケアとプロフェッショナルケアの二人三脚で、矯正治療中の虫歯予防に取り組みましょう。
※現在当院では新型コロナウィルスの感染防止の観点よりプラークや歯石の除去、PMTCは控えさせていただいております。(ご希望の方は治療前にお知らせください)